『クリエイティブ・クラスの世紀』

本書は、ジェーン・ジェイコブスのことが多く引用されていて、
ルイス・マンフォードにも通じるところがある。


マンフォードの『都市の文化』は、
宮本憲一先生が『都市経済論』のしょっぱなで
ル・コルビュジエを批判するために引用してるのが
あまりにかっこよくて英語でも日本語でも読んだ。
コルビュジエの建物はかっこいい)


だから、マンフォードの都市に対する考え方は仕事に大きく影響している。


マンフォードをも批判したジェイコブスが
『アメリカ大都市の死と生』で書いていたことがとても印象的で、
都市は多様性と新陳代謝を失ってはいけないと思い続けてきた。


それに、地域商業ってのは単なる商売人の集団ではなくて
社会的に大きな役割を担っていることも
ジェイコブスを読んでその意味をしっかり理解できた。

もちろん、仕事をする中で実感している。


『クリエイティブ・クラスの世紀』は、リチャード・フロリダが書いた本で、
本書の中にでてくる『The Rise of Creative Class』が有名になっていたときに
読みたいなーと思っていたら、これは彼の3冊目の本が翻訳されたもの。


その中に何度も出てくるジェイコブス。
それだけでなんだかぐいぐい本の中に引き込まれる。


ジェイコブスの引用でこれだ!と思ったことは、
新しいアイディアには古い建物が必要だ 
というところ。

歴史あるまちがどうすればたくさんの人を惹きつけて、
生き生きとしたパワー溢れる場所となりえるのか。


常にそんなことを考えているので、ピンときた。
古い建物なら歴史あるまちに数多くある!


もちろん、歴史的な建物を生かしていくつも事業をしてきたけれど、
それらが新しいアイディアを生む源になるんだと改めて大切さを痛感。



クリエイティブ・クラスというと、なんとなく知的労働者で
アッパークラスな感じがするけど、
本書で一貫しているのは、人間がみんなクリエイディブにならないと、
またはなれる環境をつくらないといけないということ。


今はクリエイディブクラスで働いている人は30%で、
あとの70%のクリエイティブな才能を浪費している。


都市はこれらの方向に向いていくことが求められる。

技術と才能、寛容性。


また、大前研一さんを引用して地域国家について書いている。
これからは国と国ではなく、地域と地域がこのクリエイディブクラスを惹きつけるために競争するようになるというところにも同感する。



アメリカの郊外に住む10代は
麻薬や飲酒、飲酒運転、喫煙、性交渉、非行などの経験率が、
都心部より非常に高い。

単機能の郊外は複雑な都市よりも安全ではない。

日本にも同様のことが起こっている。


以前、堺のニュータウンで仕事をしていたときに、
大きな家に住んでる高齢者は2階建てなのにおっくうになって
2階は使っていないらしく、そこに空き巣が入りやすいらしいし、
日中には子どもと主婦と高齢者だけになるから、犯罪も起こりやすいと聞いた。



新しいドリーム。
自分が好きな仕事で、働くことを楽しんで、自分自身でいられるコミュニティ。



新しい価値観。
偏狭、不寛容、差別を認めない。
個人の自由への制限を拒否。
環境汚染は悪。
宗教的な信条を他人に押し付けない。
子どもに対して自分自身で考えること、他人のルールにただ従わないことを教える。
人種の共存、プライバシー、選択の自由、多様性、異質な伝統の尊重。


共和党民主党もそれらに応える政治家を輩出できていない。


日本のは完全にゲーム、またはコメディになっている。


でも、悲観しない。
小さなまちでがんばるいろいろな動きがあるし、
たくさんのブログからも書籍からも伝わってくるから。


クリエイティブ・クラスの世紀