『人間であるために』

ルネ・デュボス著。 医学的微生物学者。


ビレッジホームズを開発したマイケル・コーベットが
マンフォードと共に影響を受けた人として挙げていたので読みました。
1968年にアメリカで出版された本。


40年も前に書かれた本であるのに内容が新鮮なのは驚きと同時に、
人類は書かれている警鐘にまだ気づかずに、
もしくは知らないふりをしているのかもしれないと感じます。


西暦2000年の人々は、生活を効率化させる技術に嫌気がさす。
「人間の生物学的、精神的存在を形成した自然諸力とのじかのふれあいを
 取り戻したいと望むだろう」


人間の五感の大切さについて
「感覚を非活動のままにしておくと、人間の精神的平衡と知的能力が急速に衰退する」


テレビ他、メディアについてもアイロニックに書いています。
環境全体が人間の感覚と行動に影響を及ぼすものであるとして、
「若者向けのテレビやその他の公共放送の番組編成者は、・・・・
 一片の社会的良心をもっているなら、
 ・・・・たびたび苦しんでいるに違いない」



マンフォードの『機械の神話』からも引用して、
「もし人間が、"高層"住宅のように画一的で、駐車場のように平凡で、
 オートメーション工場のように生活のない世界にもとから住んでいたとしたら、
 イメージを描き、言語を形成し、着想を得るために欠かせない変化に富んだ経験
 を持ち得たかどうか疑わしい」


環境や文化の多様さがなぜ必要なのか。
「人間の本性のなかに眠っている種子を発芽させるべき多種の土壌を用意する」


都市計画についても触れています。
「都市をたんにビジネスのためだけでなく、
 文明の精神をつくり、かつ、経験するために使うことをふたたび学びとならければ
 どんな都市計画も、都市が生物学的衰退をもたらす無意味な無秩序状態に陥るのを
 防げないだろう」
「都市計画においてもっともたいせつなことは、人間が生物学的に何を必要とし、
 文化的になにを望み、また何になりたいと願っているかもっともよく知ること」


超高層マンション、巨大なショッピングセンター、大型ディスカウント
20世紀の癖が直るのは21世紀のいつごろなのでしょうか。


警鐘はすでに鳴らされているのに。