市のススメ

2010年8月に自分で書き留めてたのが見つかったので掲載。



都市の起源を遡ると市(マーケット)が重要な役割を果たしていたと思われる。


地域経済の活性化を目的としたイベントは数多くあるけれど、そのイベントが地域経済をどのように変革していくのかというビジョンと戦略なき集客イベントが多いのも事実。


地域経済の活性化に寄与すると銘打つのであれば、単なる集客イベントを繰り返すだけではなく、そのイベントがどのようなプロセスで、まちをどのように変えていくのかを主催者側は考え、認識したいところ。ただ、イベントによって来街・来場してくれるお客さんや遠くから眺める人にはその趣旨が伝わりにくいが、実態として地域経済に動きがでることで理解も促進される。それまではイベントを成功させるために考えぬいて、試行錯誤と行動あるのみだ。


このブログでも何度か書いているが、枚方宿(大阪府枚方市)では毎月第二日曜日に「枚方宿くらわんか五六市」を開催している。現代版の市。ポイントは毎月実施することでいつ開催されるのかを周知できるため広報費用を徐々に少なくできること、フリーマーケットではなく「こだわり・手作りの商品やサービス」の出店者を集めること、メインターゲットを遠くの観光客ではなく枚方市民に、補助金漬けからの脱却(ボランティアと出店料で独立採算)、店づくりとの連動だ。


五六市のそもそもの始まりは、町家情報バンクの取り組みがきっかけ。まちの賑わいを取り戻すために、地区にある町家等の空き家を活用する人を募るのと、地元自治会と協働で物件情報を把握し、マッチングさせる。いくつかの成功事例を作ったが思った以上に枚方宿で商売をしたいという人が多かった。登録者が100人を超えることになり、このパワーを月一回のイベントにしようということで「枚方宿くらわんか五六市」が始まる。枚方で商売をしたいという人の商売の仕方や人となりを月一回見ることができ、こちらが出店して欲しい商売人を発掘するという流れになっている。まだ枚方宿での実際の出店に至っていないが、現在五六市には800万円以上の基金があり、出店者への支援が可能となっている。新しい商売人を発掘して、地域経済の新陳代謝が促進される環境をつくりだすのが戦略だ。


シュンペーターも言うように経済が発展していくためにはイノベーションが必要であり、イノベーションは企業の新陳代謝が如何に円滑に起こるかが重要。またイノベーションのジレンマでクリステンセンが指摘するように、既存顧客のニーズを十分汲みとって対応することは企業にとって最善の努力であり決断であっても、商業のように取り巻く環境が大きく変わりやすい経済活動においては、新しい事業モデルに勝つことはできない。これらのことは、今の地域経済が停滞していることにも当てはまる。衰退する地域では、新陳代謝が円滑に起こらなくなっているし、衰退の理由はモータリゼーションではなく、新しい事業モデルである郊外型店舗と競争できる事業モデルを組み立てられていないだけだ。