中心市街地活性化法、地域商店街活性化法 地域経済再生を考える上で既存店舗売上アップの数値目標に意味はあるのか?

ここ最近、中心市街地活性化法と地域商業活性化法において、売上高アップを数値目標にすることが必須となっているようだが、本当にナンセンスだ。そもそも地域商業政策は国がすべき事では無いのだけれど、ナンセンスな理由を示しておきたい。

まず地域経済はなぜ衰退しているのか?という原因を考えてみたい。

既存店舗が衰退しているから、地域の元気がないのだろうか?そうではないと思う。既存店舗の元気が無いのは、そもそも顧客の変化についてきていない、マーケットの創造や拡大を考えられないからで、既存店舗でも変化に対応できるところはしっかりと商売をされている。

つまり地域経済に影響するほどに既存店舗の元気がないのは、単に変化についていく努力をさぼっているか、商売が上手ではないからだ。先代、先々代は商売上手だったかもしれないが、それを受け継いだものが商売上手かどうかは分からない。商売の素質が無いのに、たまたま継いでしまった可能性だってある。

そんな既存店舗の売上が上がっても、地域経済は変化しない。ただただ延命しているだけに思える。

では地域経済の衰退の根本原因は何か?
それは経済の新陳代謝が機能していないからだ。その機能が地域経済には失われている。つまりそれは、小手先勝負でどうにかなるものではなく、構造的な問題なのだ。

新陳代謝(経済のダイナミズム、自然淘汰と言ってもいい)を機能させるためにはどうしたらよいのか。
そして、そもそも新陳代謝ってなんだ。

新陳代謝が機能してれば、きっと次のような状態が起こるはずだ。
新しいチャレンジが絶え間なく、たくさん生まれてくる。そしてそのチャレンジの何が正しくて、何が正しくないのかは誰にも分からない。たくさんのチャレンジの中の選ばれしものだけが成功する。それはアダムスミスを引用するまでもなく、神の見えざる手だけが知っている。だからダメなものは消えていく。

新しいチャレンジは、イノベーションの卵であり、シュンペーターが定義したように、①生産方法の新しい仕組み②新しい商品やサービス③新しいマーケット創造④新しい仕入先開拓⑤新しい組織の活用等。

さまざまな企業家が現れ、今まで安定してると思えたものでも、その企業家の新しいチャレンジによって潰されていく。まさに創造的破壊が起こる。

新しいチャレンジは、今のままでいたい、今のままで良いという商売人の気持ち、またはプライドを木っ端微塵に砕く。
慣性の法則がごとく変わらない商売人は、社会と自分自身が離れていく。そこが新しい企業家がチャレンジする場所なのだ。現状維持でいようとする慣性の法則を打ち破る企業家が地域経済には必要だ。

通常グローバルな経済はもっと辛辣だ。
変化についていこうとしていたソニーを筆頭とする日本家電業界は、サムソン等の新興勢力に木っ端微塵にされそうだ。そしてアップルがその覇者となっている。クリステンセンの表現を借りれば、まさにイノベーションのジレンマ

それでは新しいチャレンジが起こるようにするにはどうしたらよいのか。
衰退している地域経済の環境は新しいチャレンジが起こるにはハードルが高すぎる。
やる気のない店主、儲かっていない店、後継者のいないまち、サラリーマンの方が儲かるという商売人の声。夢が無く、誰がそこで商売を始めたいと思うのか。

地域経済の新陳代謝が機能している状態をつくるためには、言葉を選ばずに言えば、そんな商売人の商売という息の根は止めないといけない。生き延びさしてはいけないのだ。それで路頭に迷うなら、あとは社会保障が面倒をみるべきこと。地域経済再生と社会保障をごっちゃにしてはいけない。

そういう意味でいうと、商店街で、できるだけたくさんの店舗が参加したほうがいいというイベントや変に集客ができてしまうイベント、まちに集客装置を作ってしまうこと、またはもともと集客措置が存在することは全く良くない。ま、だからお城があるまちは衰退してしまうということを言う人がいる、それに頼ってしまうのだ。地域経済再生にとっては逆効果。一時的に集客してしまうから延命してしまう。必要な延命は構造改革後でいい、または社会保障だ。今は延命のために時間やお金を費やす余地が無いのではないか。資源は限られている。

構造を変化させるためには、小さくても新しいチャレンジが自発的に生み出される状況が必要になる。その小さな一歩が変化のきっかけになるはずだから。

地域経済再生につながる新陳代謝を機能させるためには、そのための環境づくり、苗床づくりが必要になる。小さな成功体験をたくさんまちにつくりだすこと。既存店舗にとっては小さすぎるくらいでもいい。これまで商売というステップに進んでいなかったような人が新しいチャレンジに踏み出せる場所をつくること。

つまり地域経済再生は、既存店舗の売上とは根本的には関係のないことなのだ。
既存店舗の半数以上が上手く商売しているのであれば、そもそも支援する必要がないし、もし半数がだめなら、そこの売上があがったところで地域経済再生ではなくそれは単なる延命にすぎない。

空き店舗があってもいいし、既存店舗の売上が下がってもいい。ただ、新しいチャレンジが生まれない環境になっていることが一番問題なのだ。

その根本原因を捉えずして地域経済の再生はできない。