THE MARKET
2018年春にオープンする「THE MARKET(ザ・マーケット)」について。
たぶんぼくは、日本で一番テントを立ててそうだし、この名前を使っても誰も文句言わないかなと思うので、新しいプロジェクトの名前を「THE MARKET」にしました。
6月19.21日、11月毎週月曜日、12月21日に実験イベントをしました。ご来場頂いたみなさんありがとうございます!
まずは「THE MARKET」の説明の前に、ここにつながる2つのプロジェクトについて。
「THE MARKET」は、先日オープンした麻理子の「STAYlocal」に続いて、自分の住んでいるまちでの事業のひとつです。
ステイローカルについては、投資もしてくれて、学生も巻き込んで自分で設計もしてくれたSPEACの宮部さんが書いているのでこちらを参照。ステイローカルは宮部さんの大阪の家でもあります。宮部さんありがとうございます。
そしてステイローカルを、なんでしようと思ったかというと、Airbnbがぼくらの人生を大きく変えたからです。
自分たちのまち(家)に外国人を迎えることの楽しいことったら無い。かれこれもう100組以上のゲストが我が家を訪れてくれました。
本当に本当に楽しくて、世界中に友だちが増えていく。エアビーとの出会いに感謝です。2016年のホストプロモーションにも日本で3組中の1組として選ばれて、こんな素敵な映像にもなったことは、ホント冥土の土産級です。ぼくは脇役だけど。
マリコさん | Airbnbホストストーリー | Airbnb
Yahoo!ジャックもしたし。
BRUTUSにも載ったし。
そのこともあって最近の海外は全部エアビーのゲストに再会しに行く旅。マイアミ、台中、シンガポール、モントリオール。全部僕らが迎えたゲストを訪ねる旅。ちなみに、シンガポールとモントリオールはゲストの結婚式に招待された。
そんなこんなでゲストにとって、旅ってどうある方が良いんだろうと考えた時に、単純にそうだろうなと思うのは、自分たちの旅と同じだろうと。 自分たちが海外に旅行するとき、毎度考えるのは、地元の人が良く使う場所はどこなのか、そしてそれをどうやって探して見極めたらいいか。
ぼくらは「Buy Local」で多くの良き商いをする人と出会って、そしてその良き商いを守り育てたいと思っている。
ぼくらの好きな地域の良きお店だからこそ、きっと海外の人もぼくらと同じく、日本に来たら地元の人(ぼくら)が良く使う場所に行きたいだろうなと思ったのです。
そんなことができる宿をしようと思ったのがステイローカルの始まりでした。もちろん日本の人にも泊まって欲しいので、みなさんよろしく!
1組限定の宿「STAYlocal」
100平米貸切ゲストハウス
2人で12,000円〜
予約はこちら↓
次に、バイローカルは、思えばもう5年目。
バイローカルの趣旨はこちら。
去年までは、毎年4月29日に「どっぷり昭和町」と同時開催してきたのですが、今年からは別日開催。
なんで今年5年目にして「どっぷり」と同じ日にしなかったといえば、一緒にしていく違和感は最初からあったんだけど、違いを確信したからです。「どっぷり」は「未来のお客さん」が喜ぶ質感になっていない、それが悪いわけじゃない、責めてもいない。違いは違いなだけ。
「どっぷり」は、とにかく多くの企画をしたくって(またはしなくてはいけなくなり)、目的と手段が一致してないからビジョンが見えなくて、集客がメイン(多くの人が来場しないと成立しないよう)に見える。
一方でバイローカルは、ちょっと語弊があるかるかもだけれど、目的と手段を一致させたいから、そもそも多くの人が来場しなくてもいい。
もうかれこれ20年もまちづくりを職業にしていて言うのもなんですが(だからこそ思うのかもだけど)、まちって未来が多分決まっていると思うんです。
ぼくらが何をしようが、何に抵抗しようが、未来は一定決まっていて、勝手に上手に進化発展するんだと思います。
ということは、そこには未来につながっているお客さんがいるはず。未来のお客さんは決まっている。つまり、未来のまちは、未来のお客さんがつくる。
バイローカルは、そのお客さんに来て欲しい。未来に近いお客さん。
当日配布した冊子[PDF]・来場者のほとんどが周辺の方
ぼくは多くの地域でマーケットをしているんだけど、夏には、かき氷が絶対売れるんです。それも、安い200円くらいの、何の代わり映えもしないものが良く売れる。
みんなの意志(市場)は、計画されたものよりも、ほどよく上手に機能すると基本的に信じています。
でも、ぼくの開催するマーケットにはそれぞれ目的(見たい・感じたい未来)があるわけで、普通のかき氷が沢山売れることについては、それがいいとは思えないし、そこに未来を感じることが全くできないのです。
なのでぼくが関わる夏のマーケットでは普通のかき氷がなくて、自家製で果肉たっぷりこだわりシロップの超美味しいのしかありません。でも500円とか600円とか価格は倍以上します。
価格が高いことが重要ではなく、未来につながるお客さんを捉えられる、そしてその人たちがその価格に価値を感じるものになっているかどうか、が重要なんです。万人ウケしなくても全然構わない。
普通のかき氷が売れるのは全くもって悪いことではないと思います。だけど、ぼくはそこに未来が見えない、というか、未来が見えないから面白くない。
そう、だからバイローカルは、未来のお客さんを集客しつづけたい。そしてその人たちは、そんなに多くない。もうひとつ言うと、その人達は未来のお客さんだから、その少数のひとたちが未来をつくっていく上で先頭に立って歩んでいくんだと思います。
市場は多くの人の意向で動くしそれは正しいと信じています。でもその意向の方向に向かって連続的に見えて、実は未来ってどこかで不均衡になって不可逆なんだと思います。多くの人の同意からではなく、少数の理解されない人から未来は生まれる。
以下は2012年の読書メモにあったんだけど、つまりこういうこと。誰かこれに見覚えのある方出典教えてください。
経済的社会的発展は一般大衆の態度や行動に依存していない。
どんな国においても発展の歩調を整え、発展の方向を決定するのは、ひとにぎりの少数派でしかない。
もっとも早い速度で発展するのに成功した国では、企業家精神にあふれ、進んで危険を冒した個人たちの少数派が、一般大衆の先頭をきることによって、後に続く人びとがその真似をする機会をつくりだしてやったことが、やがて社会の多数派の労働の生産性を増大させるのにつながっていったのだ。
だから、未来は現在の創造的破壊だし、シュンペーターが見抜いた通り。小さい話で恐縮だけど、普通のかき氷を破壊してこそ未来がある。
前置きが長くなりましたが「Buylocal」「Staylocal」からの「THE MARKET」。
まちの再生に携わって20年、次の20年はこれに人生をかけようと思っています。
業態としては、ご近所にある常設(毎日やってる)マーケットです。
地方の中心エリアの再生に長く携わってきて、毎月1回のマーケットをいくつもいくつも開催してます。そして、まちのコンテンツを丁寧に伝える努力を地域の人と一緒になって取り組みつづけています。そうやってまちの期待値を上げつつ、投資リスクも心理的リスクも下がったところでリノベーションもしつつエリアの価値を向上していく。完璧なストーリーに見えて、実は限界があることが分かったのです。
もちろん、今でも地域で仕事をしていれば色んな感動が毎回毎回訪れるし、月1マーケットが地域にあることの重要性も自分が一番理解しています。
マーケットはもう10年もしてるのに毎度楽しいとは思う。いまでは月に7ヶ所もあって、全部でテント立ててるけど、楽しい。
けれど、地方の衰退の速度ははやすぎて、いくら中心エリアを再生しても、その周辺の衰退の速度に追いつけない。
それはマーケットというプラットフォームを維持して、まちのコンテンツを丁寧に丁寧に伝え、リノベーションによって新たなコンテンツを創造し、エリアの価値を向上させる上で一番重要な、新規需要を創り出す(域内市場のパイを広げる)こと自体が困難になってきたからです。
日本の多くの零細都市は、たぶん同じ社会経済状況なんだと思います。そりゃ、県庁所在地レベルやその周辺都市ならまだ多少は大丈夫ってのはある。
ただ、早かれ遅かれ、衰退の速度が加速していくのは見えてます。
衰退の大きな原因のひとつは、やはり生産者や加工業者の経営状況の悪化だと思う。つまり、中心エリアの周辺で生業をなしている人々。
だから生産者や加工業者の所得が向上しない限り、中心エリアにお金を落とせる層がどんどん減っていく。すでに減っているから、中心エリアをどうのこうのするのは大切なんだけど、根本的な解決にならないと気づいてしまったわけです。
産地の所得向上のためには、外貨を稼ぐことが一番手っ取り早い。そのためには産地の産物が都会へ、都会のお金が産地へ。この流れをつくるための新しい流通の一助に「THE MARKET」はなりたい。観光産業も勿論その一助だとは思うんだけど、観光観光といって、本質捉えて取り組めている普通の都市ってほとんどない。にわか景気がおおいね。本質捉えたサルトが関わっている中心エリア再生はもちろん継続したい。
その上で、日本の都市再生を見据え、僕自身の情熱をささげる次の20年の進む道をこの「THE MARKET」で作っていきたいのです。
じゃあ「THE MARKET」で何がしたいかと言えば、実現したいのは次の7つ。
1.これまで恐らく2000以上の出店者と月1マーケットで出会って、その資産を次につなげたい
2.地方で仕事してきて事業を起こすのにとても苦労してきたけど、都会って楽勝って思ってきたし言ってきたから、それを実証したい
3.自分の家の徒歩圏内に素敵な場所をつくりたい
4.地方の衰退を救う次の一手は新たな流通による産地側の所得向上だと思っていて、それを実現しうる出口を都会につくりたい(だから「THE MARKET」は1ヶ所ではなく、数年で10ヶ所以上つくりたい)
5.ステイローカルを家の近くで複数展開したいので、チェックインを集約させたい
6.月1マーケットで出会ったホントに素敵なメンバーと一緒に何かしたい
7.まぁ、いろいろあるけど、ぼくはやっぱり未来だと思う「Django」に感化されたし、一緒に何かしたい
1.については、この10年間で出会ってきたクリエイティブな人たちとの出会い・資産を眠らせるのは勿体無い。出会った作家さんにもぼくらにもメリットのある手法を作り出してもっともっとマネタイズしましょう。
2.については、6月19日・21日、11月6日・13日・20日・21日、12月21日(いずれも平日)に実験をしてきて、都会での集客は、地方より本当に楽だと実感。
これだけ月1マーケットをしてるわけだから実験イベントをするのは得意技なので、既に7回の「THE MARKET」を開催しました。
どんな人がどんな時間帯に、どれだけのお金を落としてくれるのか。わざと一番むずかしいだろう平日の昼間に。そして雨や本当に寒い日でも、その方が実験にとっては好都合ということで開催しました。
結果、こちらが思っていたよりも多くの売上があって、そしてどのような層が、どうやって楽しむのかについて、ある程度の確信を持つことができました。
そうして導き出された仮説を元にしつつ、投資額のリミットや空間づくりに活かして現在鋭意設計及び見積もり中です。
3.については、特に説明要らない。
4.については、これはやはりRETOWNの松本さんと出会ったのが大きい。
少し書いたように、中心エリアの再生を含む地域再生は新たな流通をどう描くかだと思う。松本さんは、民間としてちゃんとお金を稼ぎエリアに貢献するという飲食店経営を極めて、すでに精肉、産直野菜、鮮魚の独自流通を作り出している素晴らしい経営者。
焼き鳥と焼肉業態を複数展開し、セントラルキッチンと精肉店を経営することで精肉の流通を構築し、産直の八百屋を経営しつつ、カフェや系列店舗に野菜を流通させて、中之島漁港では、全国から活きたままの魚を仕入れて、飲食店への卸事業をしています。
既にサルトで関わっている鹿児島県鹿屋からは、とっても美味しいカンパチが毎月何百本と出荷され、産地側に都会のお金が流れています。
一回死にそうになった大阪湊町のOCATに本社があり、OCATに自分自身も店舗を出店しつつ、仲間をリーシングして再生させた立役者でもあります。
また、いまは大阪大正での河川敷利用によって多分これも日本に無いような複合商業施設をRETOWNがリスクをとって事業化することで、大正エリアの再生に向けて動いています。こちらは来年夏のオープン予定。
松本さんは、同い年という共通点以外ぼくとは全く違う道を歩んできたのに、地域再生への答えと方向性が似ていている。この出会いには本当に感謝です。
今回の事業はRETOWNとサルトが共同出資する会社「THE MARKET」を設立して進めることで、スケールアップして、スケールアウトの速度を早めたい。
5.については、ステイローカルを複数展開することで収益性をあげたい。
6.については、オーガニックコーヒーの自家焙煎をしているグローブマウンテンコーヒーの外山さん、本当に美味しいクッキーをつくるパティスリーサキモトの崎本さん、マーケットを通じてBBQスタイルの業態開発をした池田屋ハナレの新城さん、お茶の新しい見せ方を常に考えてるセクシー茶屋「番茶屋茶房」の塚尾さん、若干26歳のイケメン農家の横山くんと何かしたい。
7.については、ジャンゴのある松虫エリアの価値をもっと上げていきたい。ジャンゴがぼくらの家の近くにあるのは、本当に嬉しい。全国だけではなく、ぼくらの海外からのゲストの多くが絶賛するお店。お店のかっこよさもだけど、ジャックさんの気さくさや気持ちが伝わるんだと思う。そんなジャックさんと何かしたいなと思ったのが、今回の第1弾「THE MARKET」につながっているのは事実です。自分の家の周辺の価値があがれば、資産価値だって上がるしそうなれば嬉しい限り。
今回「THE MARKET」をする東天下茶屋駅は、大阪の中心でもなんでもなくて、単なる住宅地にあるチンチン電車の小さな駅。その横に建っている阪堺電車が所有する平屋の空き店舗(約延床40坪程度)。実はもともと周辺は東天下茶屋商店会。だから用途地域はここだけスポットで近隣商業。
でもまぁ、御多分に洩れず駅前商店街は寂しくなってます。多くの人にとって用のないエリアに成り下がってしまっています。これは地方都市と同じ。まち(エリア)に求める価値観が変わってしまったのに、まちの価値が変わらないから衰退する。
THE MARKET をする物件は、元々は5店舗が入居してたそうです。
おにぎり屋さんに、喫茶店に、お好み焼き屋さんに、事務所に、美容室。
ひとつ抜け、またひとつ抜け、結局全部抜けて、その後には整体院が入ってましたが、それも抜けて40坪の建物全体が空き店舗になってました。
偶然歩いてて、思いついた。
去年フロリダに行った時に、今年台中、シンガポール、モントリオールに行った時に、毎日やっている常設マーケット(のようなお店)に出会って、こんな場所をつくりたいなぁと。
でも、誰がそんな空間を求めてるんだろう。何かをしたいパッションはすごく大切だけど、誰が求めているのか?から考えるのが大切と日々多くの人に言っているように自分でも考えてみた。
それ自分だなと。
そして自分はどんな意味で「THE MARKET」を求めているのかを考えると、日常の中に存在する場所として、近所の人がふらっと立ち寄れて、一緒に育てていくような、自分たちのライフスタイルに寄り添っていて、かつ変化があって、常に新しい刺激がある感じ。
6月19日に開催した実験イベントの様子
特殊な観光地でない限り、地元の人が愛するまち(エリア)にならないとって話は仕事で携わっている丹波、伊賀、三田、大東、鹿屋でも毎度毎度言ってるんだけど、大阪市内での場合それは500m圏程度のご近所加減。
そんなご近所加減の中で、ぼくらがキュレーションするその道のプロフェッショナルや生産者といった出店者、つまり本物に出会える。出会えるだけじゃなくって、会話したり友だちになったり。日常だから繰り返し訪れることで、どんどん自分のライフスタイルが変化していく。
オーガニックの自家焙煎コーヒーの味を知り、焙煎しているプロの話を聞いて、そして友だちになったと思えば、横にいる日本茶の職人がプロデュースしたスイーツを買い、丹波からその日に採れた野菜が、その日の食卓の話題になる。
いろんな作家さんも出店するから、友だちへのプレゼントや自分のために、例えばアクセサリーは、作家さんから制作のストーリーを聞きながら品定めできる。
そういう常設マーケットだからこそ出来る小さなエリアの拠点のような場所を、大阪の中心ではなく、下町感溢れるこの小さな東天下茶屋エリア(晴明丘学区程度)でつくるのが未来のお客さんに求められるものじゃないかと考えたわけです。
11月27日の実験イベントの様子
単なる商売の場所ではなくて、日常生活の中の特別な場所。
色んなチャレンジが生まれて、インスピレーションを受けて、それらが定着したり変化していったりする場所。そこから未来が垣間見れる場所。
この小さなエリアのご近所加減がほどよく良い加減。
「THE MARKET」は、そんな小さなエリアの特別な場所になりたいと思っています。
そしてこの小さなエリアの特別な場所を、大阪市内でまずは10ヶ所以上つくりたい。10という数字が問題なわけではなく、新しい流通を構築するにあたって、それくらいのボリュームでないと、産地の状況に変化を起こすことは難しいし、事業としても成立しずらい。
サルトだけではそのスピードで進むのは困難だけれど、RETOWNの松本さんと組んで進めることで可能だろうし、そこに進むことで、サルトがミッションとして掲げる「地域に新しいチャレンジを創造する」ことができる社会、というか日本を実現できると信じています。
話は大きくなったけど、まずは東天下茶屋での第1弾「THE MARKET」の来春オープンに向けて動き出します。
今回も近畿大学建築学部建築学科の宮部ゼミの協力を得て、「THE MARKET」の基本構想を提案してもらいました。その基本構想に基づいて、マグネットの坪田さんが設計、SHU建築の中山さんに施工をお願いしています。
1月中旬には基本設計も確定して、2月から工事に入る予定です。
みなさんお楽しみに!