個別店舗支援は最優先なのか

前回の良くある話後半。


さて、地域商業再生のまちづくりで、一番乗り越えられないのが、この話だと思います。


「まちづくり?、そんな事より、今の商売の売上を上げてくれ、集客できるもの作ってくれ」


そしてまた、僕らまちづくりを生業にしている人も、なかなか乗り越えるのが難しいのもこの話です。クライアントが商店街の場合、まさに難しい。だから結局、生ぬるいことにしかならないのでしょう。集客イベントや売出やチームビルディングで終わってしまう。


もちろん、まちづくりって、プライドをかけた挑戦だし、最終的に(変化に対応して)商売されている方の売上を上げるためにしているのもまた事実。


でも、地域商業再生のまちづくりで必要なことは非常にシンプルで、まちのファンを増やしつつ、新しいチャレンジが起こる環境をつくること。


新しいチャレンジは、単に外からの人間が入ってきて商売を始めるというだけではなくて、現在商売している人や後継者が、新しい取り組みを始めることも含まれます。もちろんまちの既存魅力コンテンツと親和性のあるチャレンジが重要(この話はこの話で別の機会にします)。


まちのファンを増やしつつ、新しいチャレンジが起こる仕組みづくりをする。


このことは、個別店舗の売上を直接上げることにはならないことが多い。特に現在商売がしんどくなっている商店にとっては関係の無い(自分とこの売上が上がらない)ことのように見えてしまう。だからこそ厄介な問題だったりしますが。


つまり、もし仮にパン屋さんがまちにあったとしても、お客さんが減少してきていてもうやっていけてないのに、趣味のように続いているところがあるとすれば、その個店を支援することがまちづくりではなく、その個店が変わる事も含めて、もっと新しいことに挑める人が出てきたくなる「環境づくり」をすることが、地域商業再生のまちづくりになります。


その場合往々にして、従来からパン屋さんを経営してきた人が変わることが少なく、新しいチャレンジャーを受け入れることになるので、まちとすれば、従来からしていたパン屋さんには最終的に退場して頂くことになり、どうしても亀裂が生じてしまいます。


ここで恐らくこういう反応が出ます。
税金でひとの商売邪魔するんか?という反応と、これまでそのパン屋さんでパンを買っていた高齢者はどうなるんだ!と。


この反応の問題点は、地域商業再生のまちづくりと福祉問題解決とを混合している、または問題をすり替えているところにあります。
もちろん一緒に解決できることが一番よいけれど、問題の原因が違えば解決策も勿論違う。


そしてこのことは、なぜか地域商業は地域コミュニティを支えている的な単一方向的で短絡な発想と結びついて、新しいチャレンジを受け入れない膠着したまちの環境を温存して、結局まちが衰退するスパイラルから抜け出せない状況をつくってしまうので厄介です。


商店街で一緒に商売してきた仲間の、商売敵をわざわざまちづくりで導入しなければならない状況は、商店街では乗り越えにくいのは心情として理解できますが、ここを乗り越えないと、まちのファンと新しいチャレンジが生まれる環境づくりにならないのです。


そして、もうひとついうと、まちづくり屋は経営コンサルタントではないので、個別店舗の売上をどう上げるかなんてノウハウがありません。
それはお門違いと思ってもらえないのも、まちづくり屋が世間にまだまだ認められていない証拠でもあるという自戒の念と、もっと成功事例をつくらなければという意気込みを決意するのであります。